【Q&A】打ち上げ成功の農林衛星、作況予測から農家向け個別サービスまでどう使われるのか?
農林衛星が宇宙へ飛び立ってから半月(7月 23日基準)が過ぎた. 農業界では科学的農政の始まりになるとの期待感が大きいが、農業者はまだ大きく実感できていない. そして農林衛星が本当にわが国の農業に多くの変化をもたらせるのかについて、気になる点も少なくないだろう. これを受け、韓国農業技術新聞は、農林衛星データを主導的に扱っている農村振興庁国立農業科学院農業衛星センターの職員らとの書面インタビューを通じて、農林衛星の活用などについて話を聞いた.
Q. 農林衛星が既存の衛星と異なる点は何か.
A. 農村振興庁と山林庁などが推進した、農業と森林専用の観測衛星である. 観測幅は 120㎞で, 12~16㎞である国土衛星より広い. 再撮影周期は 3日で, 欧州宇宙機関の Sentinel-2(10日)や米国地質調査所の Landsat8(16日), 国土衛星(4~5日) より短い. 空間解像度も 5m カラーである. 国土衛星は 0.5m 白黒·2m カラーである.
Q. 農林衛星の価値は何か.
A. 全国単位の国土撮影を 3日ごとに行える国内唯一の国家衛星である. Sentinel-2(欧州宇宙機関) 衛星より 1.6倍頻繁に撮影できる. 国民に精密に補正した映像を無償提供する予定であり, 5m級衛星画像の購入費用を削減する経済的効果と、データ主権を確保したという点で意義がある. また、きめ細かく撮影されるデータを活用して多様な地表面現象を解釈する学術的活用も期待される.
Q. ニンニク·タマネギなど主要野菜類は、毎年の作況予測の失敗により産地廃棄と価格変動が繰り返される状況にあり、農林衛星情報を活用した需給調整の科学化への期待が大きい.
A. 衛星画像と AIを活用して作物の栽培面積を推定し、潜在的な供給量を把握できる. また、時期別の衛星画像を通じて、筆地単位の作物出荷面積と出荷率情報をきめ細かく提供して需給管理を支援し、衛星画像を基盤に作物の生育モニタリングと作況情報を生産できる.
国内外の農耕地を多角的に精密観測する. 国内では農作物観測 42種(栽培面積 17種, 収穫出荷面積 4種, 生育 14種, 収量 7種)をはじめ、農地被覆変化 2種, 農業災害·水資源 7種など、多角的なデータを算出する.
具体的には、イネ, 大豆(田畑転換), トウモロコシなどの夏作物と、小麦, 冬ハクサイ, ニンニク, タマネギ, 大麦, IRG, ネギ, ダイコン, ニンジン, キャベツ, 果樹(リンゴ·ナシ) など 17種を AI 分類モデルと連携して筆地単位で栽培面積を推定する. また、気候変動で深刻化する浸水·洪水, 倒伏, 病害, 虫害など災害 4種と、土壌水分, 蒸発散, 農業干ばつなど土壌環境 3種を精密探知する. 北朝鮮地域の農作物 11種と、米国·ブラジルなど主要穀物生産国のトウモロコシ, 大豆, 小麦など 10種の作況状態をリアルタイムでモニタリングする.
Q. 3日ごとに入ってくる膨大なデータをどのように処理するのか.
A. 農業衛星センターは、農林衛星の打ち上げに合わせて、衛星画像の収集·処理·管理の全過程を自動化できる運用システムを事前に構築した. また、大規模画像処理のための高性能処理·保存用の電算インフラも構築した.
農林衛星には、農作物と森林資源の生育判別に有利な 5つの分光バンドを搭載しており、国内農林業構造に適した精密観測基盤を提供する. 今後、宇宙航空庁からレベル1 画像の提供を受ければ、農業衛星センターは運用システムを通じて農林衛星画像(レベル2)と植生指数画像(レベル3)を自動生産することになる. この過程は画像受信後 1日以内に処理する予定だ.
初期運用期間には継続的な運用システムの稼働·点検により処理性能と安定性を改善し、今後のサービス拡大と利用者需要の増加に対応して、システム性能と運用能力も段階的に強化する予定だ.
Q. 衛星が提供した画像と実際の現場が一致しているかを確認するための ‘現地調査·検証団体制’が必要だと考える. 衛星データを道単位から市郡単位まで滑らかにつなぎ、誤差を減らしていく具体的な実測検証体制はどのように整えているのか.
A. 農林衛星の基本成果物である衛星画像(レベル2)と植生指数画像(レベル3)の品質管理のため、全国 3か所で運営中の検·補正のための地上観測(イネ) サイトの測定資料を活用して、衛星画像を継続的に評価し品質を改善する予定だ. あわせて多様な作物を対象に検証を拡大し、農林衛星画像の品質管理を高度化し、検·補正のための地上観測サイトを段階的に拡大·構築していく.
レベル4の場合は、農食品部·国家データ処·農村振興庁·韓国農村経済研究院·農業政策保険金融院などで収集された農業現地調査資料を活用して、衛星画像分析結果を評価する予定だ. 農業現場データ活用のため関連機関と業務協約を締結しており、蓄積されたデータを基盤に衛星情報を高度化していく. また、農村振興庁農村人的資源開発センターの教育課程を通じて、農村指導士, 市郡の農業職系列公務員の衛星情報活用能力を強化し、分析結果をフィードバックできる体制を構築する.
Q. 農民と地方政府が実際に体感できる対国民サービス提供の構想は何か?
A. 農民は空から見た自分の農場の作物生育状態を確認し、必要な営農管理ができるようになるだろう. つまり, 農民がスマートフォンや PCで ‘自分の筆地’を選択すれば, 衛星画像ベースの生育現況と時系列植生指数の変化を通じて、生育の進み具合を把握できるようになる. 資料が蓄積されれば ‘今年の生育が昨年比でどうか, 圃場群の中で自分の圃場の生育はどの水準か’を比較できる. まず 2027年に青年農業者の耕作筆地を対象に優先的に試験適用とサービス企画を実施し、青年農業者の意見を反映して 2028年から段階的に営農情報サービスを拡大する. 農業者と地方政府を対象に農業衛星情報サービスシステムを通じて農作物の生育現況を提供し、農場管理の助けとなり、生育異常への対応にも役立てる.
地方政府もまた、衛星観測情報とウェブベース地理情報システム(GIS) の連携を通じて、地図ベースで市·郡別の営農情報を空間的に管理できるようになる. 農業衛星情報サービスシステムで地方政府が自らの市郡を選択すれば、作物別の栽培面積, 生育現況をダッシュボード形式で管理でき, 資料が蓄積されれば、自らの市郡で栽培される作物の作況現況と空間分布を毎年比較·分析できるため、精密な地方農政に寄与するだろう.
Q. 農家は正確な農業災害被害調査を望んでいる. 衛星情報を活用して、農業災害に関する被害予防や事後補償の恩恵を体感できる方策は整えられるのか.
A. 農産物生産は気象条件に敏感であり、頻繁な異常気象による農業被害が増加することで、農業者の経営リスクが加重している. しかし現在の被害評価は、目視中心の現地調査による損害評価が行われているため、大規模地域で農業災害が発生した際には現地調査に困難がある. そのため、被害評価方式の効率化が必要だ.
これを受け、国立農業科学院はデータ基盤の農業災害リスク管理における相互協力のため、農業政策保険金融院と昨年 12月に業務協約(MOU)を締結した. 両機関は業務協約に基づき、衛星画像を活用した農業政策保険の現地点検の科学化, 農作物災害被害評価技術の開発などで協力する.
Q. 専門家は 5m 解像度なら筆地単位の区分は可能だが、筆地内の微細な生育変異まで確認して施肥処方などを行うにはやや物足りないと話す. こうした部分を解消するため、衛星(マクロ)-ドローン(ミクロ)-露地ロボット(超ミクロ) データを有機的に結合する融合研究はどのように準備しているのか.
A. 衛星画像を活用して主産地単位の筆地別作物の生育を広域的, 周期的にモニタリングし、生育異常を判別して精密診断が必要な筆地を選別する. 生育異常として選別された筆地は、ドローン画像と現地調査を通じて生育異常の原因や被害面積などを確認する. 衛星-ドローン-現場(ロボット) 連携体制を通じて、可変施肥や防除など現場に合わせた処方を支援する計画だ.
Q. 2027年の本格任務遂行を前に、人員補強と予算拡充が必要だという声が出ている. どのように備えているのか.
A. 農林衛星の本格的な活用に備え、 2024年 5月に国立農業科学院内に農業衛星センターを新設(14人定員)し、衛星画像の収集·処理·活用のための基盤を継続的に整えてきた. 2027年から本格運用されれば、全国単位の衛星画像の処理と政策支援のための活用成果物の生産·サービス, 後続衛星の企画·予算·事業管理のための専門人材が追加で必要となる.
また、農林衛星の円滑な任務遂行と継承のため、関係省庁と協議して後続衛星の開発を推進し、関連予算の確保に努める予定だ. 農林衛星の本格的な活用と観測, 新規任務の遂行, 後続衛星の推進など拡大する業務を担う人員の補強が急務であり、増員を推進する.
Q. 農林衛星は宇宙航空庁·山林庁との複数省庁協力プロジェクトだ. データ共有と共同活用を円滑に進めるためのガバナンスおよび協力体制はどのように調整されているのか?
A. 農村振興庁は、農林衛星の運用と活用全般にわたり、データ共有と共同活用が円滑に行われるようガバナンスを構築·運営している. まず、農村振興庁(農業衛星センター)と宇宙航空庁(国家衛星運営センター)は、次世代中型衛星 4号の受信, 管制など安定的な衛星運用のための業務協力体制を構築し、衛星運用を準備中だ. 農村振興庁と山林庁は、農林衛星研究·運営協議体を通じて、農林衛星共同運用規定の整備, 衛星画像生産のための前処理アルゴリズムの共同開発および共有, 撮影計画の策定など実務協力を継続的に推進している.
また、農業の災難·災害発生時には、 3機関の協力による緊急撮影で迅速に画像を確保し、共同で分析·活用できる協力体制を構築した. 今後も農林衛星基盤のデータ共有と共同活用を拡大し、山火事·土砂災害予防, 農耕地毀損監視など多様な災害対応と農林分野の政策支援に活用できるよう、省庁間協力を強化する計画だ.
Q. 一部では、多年度研究の推進と中核人材育成のための長期プロジェクト組織新設の提案についてどう考えるか.
A. 現在推進中の衛星画像活用技術開発(R&D)と農業衛星情報ユーザーグループを基盤に、衛星画像活用成果物の開発および中核人材育成を進めている.
まず ‘データ基盤の農業観測のための衛星画像活用技術開発(2026~2030年)’ R&Dを通じて、農業衛星活用成果物の開発およびアルゴリズムの高度化を進める予定だ. 農作物の栽培·出荷面積, 生育, 農業災害, 農耕地, 衛星情報システム開発などの分野で、産·学·研の研究陣が R&D 課題の遂行および研究団を構成し、多年度にわたる研究参加を通じて農業衛星研究人材を育成することになる.
あわせて、ユーザー中心の協力体制を通じた研究成果の拡散にも注力する. 現場の多様な需要を取りまとめ、ユーザー要求に基づく農業衛星情報サービスと活用体制を整えるため、昨年 5月に ‘農業衛星情報ユーザーグループ’を発足·運営している. これを通じて、農業衛星関連の産業生態系の造成と専門人材の裾野拡大を導き出したい.
Q. 今後進める性能検証と補正段階で最も重点を置いている技術的課題は何か.
A. 最も重点を置いている技術的課題は、農林衛星の原画像の前処理と補正を通じて農林衛星画像を生産し、標準化することだ. 初期運用期間中、衛星搭載体(カメラ) の性能を綿密に検証し、補正アルゴリズムを最適化して安定的な衛星画像生産を準備する.
また、農林衛星画像の品質管理のため、全国 3か所で運営中の検·補正のための地上観測サイトの観測資料を活用して、衛星画像を継続的に評価し品質を改善する予定だ. あわせて多様な作物を対象とした検証を拡大する一方、画像の品質管理を高度化するため、検·補正のための地上観測サイトを段階的に拡大構築する計画だ.
Q. 農林衛星の打ち上げ成功によって変わる農業の未来像は何か.
A. 全国すべての農耕地を衛星が筆地単位で常時観測できるようになった. これまで標本中心の現地調査だったとすれば、今後は衛星基盤の全数調査へ転換され、継続的に蓄積された筆地別観測履歴が農業のデジタル転換のための中核データ基盤となるだろう.
同一筆地の累積データを活用して平年の生育と比較し、異常生育, 作況変化をさらに正確に分析でき, データが蓄積されるほど筆地別特性を反映したオーダーメード型営農管理と営農意思決定支援の水準が高度化される. 市·郡農業技術センターや民間営農コンサルティング業者などが衛星情報を活用したオーダーメード型営農支援サービスを提供し, 蓄積データを基盤に作物生育診断と栽培管理, 現地コンサルティングなど多様なデジタル営農サービスへ拡大されるだろう.
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