雨水で畑に農業用水を供給…農振庁の無動力技術、水不足量を最大57%削減
インタビュー/農村振興庁 国立農業科学院 畑作農業機械科 ユ・ソクチョル研究官 行政安全部「大韓民国災害安全研究開発大賞」長官賞…電力なしで使えてこそ現場技術 初期投資費870万ウォン、太陽光基盤の地下水井戸に比べ37.4%削減
慶尚南道陜川の実証現場で1日平均 98.3㎥に達していた水不足量は 41.3㎥に減った. 干ばつが途切れず続いた期間, つまり最大連続水不足日数も 18~21日から 13~16日に短縮された. 電気も, 地下水井戸も, 引いて使える水流もない陜川の実証地で出た数値だ. 水を引いてきた動力源はなかった. 雨水と地形の高低差, そして水が自ら生み出す圧力がすべてだった.
農村振興庁 国立農業科学院 畑作農業機械科のユ・ソクチョル研究官が開発を主導した ‘無動力統合農業用水供給技術’ の話だ. ユ研究官はこの技術により 9月 2日、行政安全部が主催する ‘大韓民国災害安全研究開発大賞’で長官賞を受けた. 行政安全部が 2019年から毎年、全国の大学·研究機関の災害安全分野の研究開発成果を対象に授与してきた賞で, 今年は機関推薦と発表評価を経て 8人が選ばれた.
“共同研究陣のおかげで代表として受けた賞”
ユ研究官は受賞の感想から研究陣に功を帰した. 彼は “私一人で成し遂げたものではなく、共同研究陣のおかげ”だとして “慶尚国立大学校と順天郷大学校, 国立農業科学院が共に課題を遂行し, 研究陣が懸命に取り組んでくれたおかげで、私が代表として賞を受けることになった”と述べた. 続けて “国立農業科学院の推薦で応募はしたが、受賞できるか疑問もあった”とし “期待していなかっただけに、審査発表後の喜びはいっそう大きかった”と付け加えた.
受賞につながった研究は 2023年から 2025年まで進めた共同課題だが, 雨水研究に取り組んだ時間ははるかに長い. ユ研究官は 2013年から雨水を利用した研究を着実に続けてきた. 彼は “これまでは平野部の農家が活用できるよう貯水容器を普及してきたが, 中山間地や高地では井戸と地下水の活用が難しいという限界があった”とし “電力なしで使える技術を開発しようと、今回の研究を始めた”と背景を説明した.
気候変動により短時間で急激に進む突発干ばつが増え、畑作物栽培地の水不足リスクは常態化している. 特に中山間·高地の栽培地は井戸開発が難しく、電力供給も困難なため、下水再利用や地下水井戸のような既存の代替用水確保方式を適用しにくい. 代替農業用水確保の死角地帯というわけだ.
集水-前処理-貯蔵-移送, 電気なしで農業用水をつくる 4段階
開発された技術は ‘集水-前処理-貯蔵-移送’の 4段階が電力供給なしで自動的に循環する統合システムだ. 雨が降る時、地中にしみ込まず地表面に沿って流れていく降雨流出水をそのまま流さず、農業用水として確保しておくことが核心だ.
作動原理を尋ねると、ユ研究官は水路をたどりながら説明した. 小流川とは、雨が降る時に山地の斜面に沿って水が流れる小さな水路を指す. 彼は “中山間地域で雨が降った時に水が流れる小流川を活用し、集水装置に配管をつなぎ, 通過した水が 5トンのメイン水タンクに入る”とし “大きな異物は集水装置でろ過されるが、小さなものは独自開発したハイドロサイクロンフィルターでろ過する”と述べた. 続けて “メイン水タンクが満水になると、あふれる水がもう一度フィルターを経て次の水タンクへ移り、農家や村単位まで届くよう設計した”と付け加えた.
研究陣によると、遠心力を利用して土や異物を分離するハイドロサイクロンの分離効率は最大 96%, 集水装置の最大集水可能量は1時間当たり 8.4㎥だ.
貯蔵された水を畑まで送る方式は地形によって分かれる. ユ研究官は “高地と低地を区分して移送するが, 低地は高低差を利用して重力で自然に流れるようにし、高地は水撃ポンプでくみ上げる”と説明した. 水撃ポンプは、水が流れていて止まる時に生じる圧力で水を高い所まで押し上げる装置で, 研究陣が開発したポンプの無動力最大揚程は 12mだ. 約 4階建ての建物の高さに相当する.
この点で市販製品の限界を超えたことが技術的成果に挙げられる. ユ研究官は “市販の水撃ポンプを使っていたところ、水が多く消費され、水漏れなど損失量が多い問題があった”とし “核心部品であるウェイストチェックバルブを独自開発してその部分を補完し、特許出願まで終えた”と述べた.
研究陣が今回の技術で出願した特許は計 4件だ. ‘畑作物灌漑のためのモニタリングおよび制御システム’(10-2025-0182493), ‘降雨流出水集水および水処理装置, これを利用した降雨流出水処理方法’(10-2025-0046790), ‘無動力畑灌漑システム’(10-2025-0117299), ‘降雨流出水を利用した無動力農業用水供給システム’(10-2025-0166502)である.
長水と陜川, 条件の異なる2カ所で別々に検証
研究陣は気候·地形条件が異なる全北特別自治道長水郡と慶尚南道陜川郡の 2カ所で 2023年 4月から 2025年 11月まで現場実証を行った. 2カ所を選んだ理由があった.
ユ研究官は “地形と気候条件が異なる場所でやってみようという判断だった”とし “長水は雨が降らなくても常時流出水が流れる中山間地域で, 陜川は雨が降る時だけ雨水を集められる地域”だと説明した. 続けて “常に流れている場所と雨水が集まる地域に分けて実証し, どちらも水が不足している地域だった”と付け加えた.
2カ所の実証の結果、1日平均の水不足量は最大 57% 減少した. 陜川郡の場合、1日 98.3㎥だった水不足量が 41.3㎥に減った. 最大連続水不足日数は 18~21日から 13~16日に短縮され, 統合システムは1日平均 27㎥を自ら生産し、灌漑用水を安定的に供給した. 18の全球気候モデル(GCM)と共通社会経済経路(SSP) シナリオのうち SSP2-4.5と SSP5-8.5を適用した将来気候検証でも、水不足量の減少効果は継続的に確認された.
貯蔵された水の水質も農業用水基準をすべて満たした. 長水郡長渓面大谷里の実証地処理水を分析した結果、 pH 7.87, EC 0.001dS/m, TOC 5.832㎎/L, SS 26.8㎎/L, T-N 0.9㎎/L, T-P 0.0㎎/Lで 6項目すべてが基準内だった.
農家の反応も悪くなかったというのがユ研究官の説明だ. 彼は “昨年、陜川で試演した時、農家の反応は良かった”とし “この技術を活用すれば、中山間地や高地でも用水確保が可能だろうとの評価を受けた”と伝えた.
水タンクの湿気と闘ったモニタリングシステム
開発過程が順調だっただけではない. 最も苦労した部分は意外にも、水を集めて送る装置ではなく, 農家が水をどれだけ使えるか確認するモニタリングシステムだった.
ユ研究官は “農家が水タンクに水がどれだけあり、どれだけ使用できるか確認できるアプリを開発したが, 実証過程で使った超音波式水位計は、水タンクに湿気がこもることで精度が落ちた”とし “その部分が問題になった”と述べた.
解決策は、水位を測る方式そのものを変えることだった. 非接触方式の代わりに、水に沈んだ状態で水圧により水位を読み取る装置を選んだ. ユ研究官は “超音波式水位計から圧力式水位計に変更したことで、水位測定の問題が解決された”とし “これにより、アプリ基盤の降雨流出水モニタリングシステムが円滑に作動するようになった”と説明した.
現場普及を念頭に置いた耐久性確保も課題だった. ユ研究官は “現場に適用して実証してみると、集水装置やハイドロサイクロンなどの耐久性が鍵だった”とし “普及時に破損したり維持が難しかったりする問題があり, 農家と現場で維持·補修しやすいよう、一般設備に比べて維持補修費を減らすことに焦点を当てて研究した”と述べた.
初期投資費 870万ウォン…井戸より安い
普及拡大の鍵となる経済性でも、地下水井戸方式より有利だとの評価が出た. 5トン水タンク 5基を含む無動力統合システムの初期投資費は 870万ウォンで, 太陽光基盤の地下水井戸システムの 1390万ウォンより 37.4% 少ない. 年間運営·維持管理費も 75万ウォンで、井戸方式(100万ウォン)より 25% 低い. 運営費は水タンク清掃費 50万ウォン, 配管·バルブ·ジョイントおよび水撃ポンプ消耗品交換費 15万ウォン, 水質分析の外部依頼費 10万ウォンで構成される.
ユ研究官は “経済性評価をしてみると、施設設置費が 800万ウォン台なのに対し、地下水井戸を設置すると 1400万ウォンほどかかる”とし “地下水井戸より私たちの技術に経済性があると見ており, そのため普及拡大を期待している”と述べた.
2027年の事業反映が目標…畜産·造園·消防用水にも
技術はすでに政策段階へ移りつつある. 研究陣は 2025年 12月、農林畜産食品部に政策提案を行い、 ‘干ばつ対策用水開発事業’ の支援対象に含めるよう要請した. ユ研究官は “現在推進中で、 2027年を目標に事業化しようとしている”とし “自治体からも、このような技術が気になるとして連絡が来ている”と伝えた. 続けて “農食品部と改めて電話で話したところ、自治体の需要があれば反映可能だと言われた”とし “自治体の要望が続けば反映され得ると見て、継続的に推進している”と付け加えた.
適用分野も拡大する計画だ. ユ研究官は “農業だけでなく畜産や造園にも十分活用できると見ており, 農業以外の分野へ拡大する計画”と述べた. 災害対応の臨時給水, 特に消防用水としての活用可能性にも言及した. 彼は “貯蔵しておいた水を火災などの緊急時にホースをつなぐだけで使えるので、その部分も十分可能だと見ている”と述べた. 海外適用についても “十分に組み合わせられると見ている”と述べた.
水タンクを段階的に増やしていく構造なので、供給規模も拡張できる. ユ研究官は “段階的に水タンクを設置する方式なので、一般的な農村の村に十分供給できる水量”だと説明した.
後続研究の重心は技術開発から普及へ移っていく. ユ研究官は “雨水研究はかなり以前から行っており、技術の高度化は確保できたと考えている”とし “この技術を持って、果たしてどれだけ拡大し普及させるかが重要だ”と述べた. 彼は、イ・スンドン農村振興庁長が技術普及を強調してきた点にも触れた. ユ研究官は “庁長も普及を強調しているだけに、後続研究は普及拡大方向の実証研究と新技術農業機械指定を推進しようとしている”と明らかにした. 極端な干ばつに備え、小規模地下水と連携するハイブリッド方式への拡張も検討対象だ.
温室の災害耐性から雨水, そして農機安全へ
ユ研究官は 2013年 10月、公募採用で国立農業科学院 農業工学部 災害予防工学科に入職した. 全州出身の彼は農業機械学を専攻し、全北大学校で学士と修士を終えた. 彼は “農村振興庁が全州へ移転するというニュースを聞き, 専攻も生かしたかった”と入職の背景を説明した.
研究の軌跡は農業現場の災害と安全を貫いている. 2016年から災害予防工学科で園芸特作分野の温室の災害耐性施設安全性研究を遂行し, 昨年、所属研究室が畑作農業機械科に編入されたことで、生産基盤の安全に焦点を当てた研究へ重心を移した. 現在は農機安全分野の研究も並行している. GPS データを活用して農機利用実態を分析する研究で, 全北特別自治道金堤市白山面のモデル団地でトラクターと田植機, コンバインに GPS 端末を取り付け、作業最適化水準を分析している. ユ研究官は “白山農協が行う農作業代行で、コンバインなどに端末を取り付け、作業量を GPS データで分析している”と説明した.
干ばつで困難を抱える農家に伝えたい言葉を尋ねると、ユ研究官は再び現場を持ち出した. 彼は “気候変動が激しく、農業を営むことがますます難しくなっている”とし “こうした状況で、私たちの研究が農家の困難を少しでも和らげられるよう、現場で役立つ技術を作ることに力を尽くしたい”と述べた.
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